2016/04/12

毛玉とアイロン



約束とは、人を喜ばせること
「暮しの手帖」の松浦弥太郎さんの本でこの言葉をみて
ああほんとうに、ぜひともそうでありたいなあと、ふかぶかと思いました。

これまでわたしはいくつの「約束」を交わしてきたかしら…
はじめてのお仕事、はじめてのデート
ひとつひとつの約束が私を成長させてくれたのは言うまでもありません。
それはきっと、ひとりひとりが大切な人だったから。
大切な人と向き合うためにちょっぴり背伸びをするからだと思います。
見栄っ張りなのかも、しれません。
でもひとりで放っておくとどこまでも背中がまあるく小さく丸まって
いずれ毛玉か何かになるに違いないのでとてもありがたいなあと思っています。
人と向き合うことは、じんわり、あたたかいアイロンみたい。


約束をするから大切な人になるのか、大切な人だから約束をするのか。
わたしにはどちらもあって、そのどちらも大切なことに変わりありません。
約束を交わすほどの仲になれることがどんなにうれしい大切なことか。

初めてお話する方とお仕事という約束を交わしてから関係を深めてゆくことがあります。
突然メールなどで素敵な計画を見せて下さり一緒に作りませんかと誘って下さるのです。

こっそり教えて下さった素敵な「計画」を、きちんと素敵な「もの」に仕上げる約束。
喜んでもらえないと約束は果たされた事にならないと思うから私は精一杯の背伸びをします。
プレッシャーはそのままアイロンになって私を伸ばしてくれます。
ここのシワもっと伸ばせるよ、って教えてくださることも多くて、自分のシワの発見の連続です。
シワシワの自分を受け入れて、ひとつずつ丁寧にシワを探しては伸ばしていきたいです。

***


いっぽうで大切な人だから約束をする、ということもあります。
この春、私は大切なひとと結婚をします。

家族として生涯寄り添うという約束を、喜ばせるにはどうしたらよいのか…。
喜ばせるどころか何の役にも立たない毛玉が家にころがっていては邪魔なんじゃないかと心配です。
役立たずでもせめて、ニット帽のてっぺんについてる毛玉みたいに、あったら面白いかな、くらいになりたいです。
(そんなことを言うとニット帽のてっぺんの毛玉に失礼だ、あの毛玉は毛玉界においても素晴らしい毛玉ですよね)

部屋の隅っこで固まって丸まっていたらただのでかいホコリなので
これからはもっと自分からも動くことがだいじだなと思っています。
ところで「誇らしげなホコリ」という使い道に困る駄洒落を思いついてしまったのですが
使う機会がもうこれからの人生で今しかない気がして、いてもたってもいられませんので
今日ここに記させてください。
こんなくだらないことでも思いついたことを心に仕舞っておけない性格で、
思いついてしまったイラストを発表しはじめたのも今思えばこの性分のせいです。
くだらない思いつきイラストや駄洒落にお付き合いくださる温かい人ばかり。本当にありがとう。

***

「約束を交わす」ということがどれだけうれしくて愛おしくてだいじなことだと思っているか…
これだけ文字数を使っても、まだ全然うまく言葉にできた気がしません。
これ以上言葉にしようとしてもくだらない駄洒落が思いつくばかりです。

お友達や家族、夫となる彼、お仕事を下さるみなさま
これまでたくさん楽しい約束をしてくださってありがとうございます!その約束のぜんぶが宝物です。


松浦弥太郎さんのように「約束とは喜ばせること」だとまだ力強くは言えないわたしですが
約束とは喜んでもらうために手を尽くすこと。だと心に決めて。

ものづくりにおいても、暮らしにおいても、自己完結でおわらせずに
大切なひとに喜んでもらうために、心と手を尽くしてゆきたいです。



***

追伸
ニット帽のてっぺんについてる毛玉は素晴らしいものです。
万が一あれがポロっと取れてしまったら、私はきっと心底がっかりするでしょう。
あの毛玉をなくしても帽子としての機能に差し障りはありませんが
それでも私は一生懸命探すでしょう。そういう毛玉に、私はなりたい。